あなたの企業型確定拠出年金(企業型DC)の商品選び(掛金配分)は、どのようになっているでしょうか?
入社時や制度導入時の説明会で、「投資はリスク分散が重要です」と教わり、言われたとおりに「国内株・外国株・債券」を細かく組み合わせた商品選びをしませんでしたか?
もし、あなたがそのような円グラフを分割するような商品選び(配分設定)をしているなら、その設定は見直すことを強くおすすめします。
何を隠そう筆者である私は、過去にそのような教科書通りの配分設定をしていた張本人です。しかし、資産運用についての知識が深まるにつれ、私のそのやり方は間違っていることに気づき、会社員にとっての最適解はもっとシンプルで、かつ合理的なものであることを知ったのです。
結論を言えば、ある程度の預金(安全資産)がある会社員なら、企業型DCは「低コストなインデックスファンド(株式)」一本で問題ないということです。
なぜなら、企業型DCという「非課税メリットのある制度」で、リターンの低い資産を持つことこそが、資産形成における機会損失になるからです。
本記事では、なぜDC内での細かい分散が不要なのか、そして何を基準に商品を選べばよいのか。その合理的な理由と、今すぐやるべき設定変更について解説します。
【実録】私が陥った「教科書通りの分散投資」の罠
「バランスよく配分」が生む勘違い
私が会社員だった頃、勤務先で確定拠出年金(DC)が導入されました。 その時に行われた資産運用のレクチャーで、講師はこう強調しました。 「卵は一つのカゴに盛るな。リスク分散が大切です!」
そして、当時の私は律儀にもその教えに従い、配られた銘柄選びの用紙と睨めっこをし、以下のようなことを考えながら慎重に分配設定をしました。
- 株式と債券の割合は7:3ぐらいにしておこうかな・・・
- 外国も国内も混ぜなきゃなぁ・・・、国内経済は元気がないから少な目にしておこう。
- パッシブ型とアクティブ型があるのか・・・、プロが運用してくれるなら株式はアクティブ型にしておくか・・・
- バランス型というのもあるのか??? であれば、これを多めにしておくか・・・etc.
このように、細かく購入する商品を分け、キレイな円グラフを作ることに満足していたのです。「これでリスク管理は完璧だ」と。
資産運用を学んで気づいた「不要な努力」
しかしその後、自ら資産運用や金融理論を勉強していくうちに、あの時の細かい設定がほとんど意味のない努力だったことに気づきました。
なぜなら、資産運用におけるリスク分散とは、DCという「小さな箱の中」だけで完結させる必要はないからです。
「資産は全体でリスク分散ができていればいい」
この本質に気づいたとき、私のDC口座の中身は劇的にシンプルになりました。
木を見て森を見ず?「資産全体」でリスク管理をする視点
では、なぜ会社員のDC運用において、教科書通りの細かい分散(特に債券を入れること)が不要なのでしょうか。 それは、資産運用の「全体像」を俯瞰すれば見えてきます。
1. 目指すべきは「現預金」+「株式」のシンプル構成
LIFE ENHAが推奨する資産配分(ポートフォリオ)は非常にシンプルです。 複雑な商品を組み合わせるのではなく、大きく以下の2つに分けて管理します。
「安全資産=現預金」 + 「リスク資産=全世界株式や米国株式(インデックスファンド)」
- 安全資産: 「生活防衛資金」や「元本を割らせたくないお金(リスクを取りたくないお金)」です。安全資産には、現預金や国債などがありますが、1,000万円までは扱いやすい現預金を推奨します。
- リスク資産: 将来のために積極的にリスクを取って増やすお金です。株や債券、不動産など様々な選択肢がありますが、全世界株式や米国株式のインデックスファンドを推奨します。
私たち現役世代には、毎月の給与という安定したキャッシュフローがあります。これに手元の「安全資産」を組み合わせれば、それだけで十分強力な「安全ブレーキ」の役割を果たします。 運用する資産(リスク資産)側で、あえてリターンの低い債券ファンドを混ぜて、二重に守りを固める必要はないのです。
【口座比較】DCは「株式クラス」の置き場所として最適
このシンプルな「安全資産+株式」という構成を作る際、企業型DCをどう位置づけるか。ここが重要です。
株式を保有できる主要な4つの口座(企業型DC、iDeCo、新NISA、特定口座)の特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 企業型DC | iDeCo | 新NISA | 特定口座 |
| 運用益の非課税 | ◎ 非課税 | ◎ 非課税 | ◎ 非課税(恒久) | × 課税(約20%) |
| スイッチング (商品入替の税金) | ◎ 非課税 | ◎ 非課税 | △ 枠の再利用は翌年(※1) | × 売却時に課税 |
| 引き出し制限 (流動性) | × 原則60歳まで不可 | × 原則60歳まで不可 | ◎ いつでも可 | ◎ いつでも可 |
| 口座管理手数料 | ◎ 会社負担が一般的 | △ 自己負担あり | ◎ 無料 | ◎ 無料 |
※1:NISAは売却すれば翌年枠は復活しますが、スイッチング(売却→即購入)としての機動性はDCに劣ります。
表を見るとわかる通り、企業型DC(およびiDeCo)は「60歳まで引き出せない」かわりに「運用益が非課税」かつ「スイッチング(預け替え)も非課税」という強力なメリットがあります。
「非課税メリットが大きい場所には、一番大きく育つ資産を置く」 これが資産運用の鉄則(アセット・ロケーション)です。ほとんど増えない定期預金や債券を非課税口座に置くことは、せっかくの「非課税枠」を無駄遣いしているのと同じです。
- 安全資産は、課税・非課税の影響が少ない「銀行預金」で手元に確保する。
- 最も期待リターンの高い「株式」は、非課税メリットのある企業型DC(やNISA)に優先して入れる。
DCという箱の中身を「株式100%」で満たすことは、この制度のメリットを最大限に享受するための最も合理的な戦略なのです。
※企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoについて、さらに詳しく知りたい方は、厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」が参考になります。
企業型確定拠出年金の商品選びの正解は「インデックス」一択
「分散は不要、株式一本でいい」と分かったところで、具体的にどの商品を選べばよいのでしょうか。
商品選びの最重要基準は「信託報酬」の安さ
企業型DCのラインナップは玉石混交です。 商品選びで最も重視すべきは、「信託報酬(運用管理費用)」の安さです。
この観点で選ぶべき商品は、「インデックスファンド」一択です。
市場平均(日経平均やS&P500など)に連動するように運用されるインデックスファンドには、以下の大きなメリットがあります。
- 低コスト: 銘柄選定を機械的に行うため、信託報酬が極めて安く設定されています。長期投資において、コストの差は最終的な資産額に数百万円単位の差を生みます。
- 再現性が高い: ファンドマネージャーの腕に左右されず、市場の平均点を確実に取れます。
- シンプル: どこに投資しているかが明確で、管理が容易です。
一方で、以下の商品はLIFE ENHAとしてはおすすめしません。
- バランス型ファンド: 株式と債券などを自動で組み合わせてくれる商品ですが、その分、信託報酬が高めに設定されていることが多いです。また、安全資産(預金)を別に持っている私たちにとって、DC内で債券を混ぜることはリターンの低下を招きます。
- アクティブファンド: プロが市場平均以上の成績を目指す商品ですが、高い信託報酬(コスト)に見合うだけのリターンを出し続けられるファンドは、歴史的に見てもごく僅かです。
- 元本確保型商品(定期預金・保険): 「減らない」安心感はありますが、インフレ(物価上昇)に負けて実質的な資産価値が減るリスクがあります。何より、運用益が非課税になるDC口座で、ほとんど利益の出ない商品を持つことは、最大のメリットを捨てているのと同じです。
「全世界株式」や「米国株式(S&P500)」を選ぶ
具体的なカテゴリーとしては、以下のいずれかのインデックスファンドをおすすめします。
- 全世界株式(オール・カントリーなど): これ一本で世界中の経済成長を取り込める究極の分散投資。
- 外国株式(先進国株式・S&P500など): 世界経済を牽引する米国や先進国に投資するタイプ。
ちなみに私の場合は、「S&P500(米国株式)」に全てスイッチする選択をしました。 これは、米国企業の成長力と株主重視の姿勢を信頼し、最も効率よく資産を最大化できると判断したためです。もちろん、「全世界株式」で世界全体にベットするのも王道の選択です。
どちらを選ぶにせよ、重要なのは「低コストな株式インデックスファンドに資金を集中させること」です。
アクションプラン:今すぐ設定を見直そう
理屈がわかったら、あとは行動するだけです。DCの設定変更は一度やってしまえば、あとは自動的に資産が積み上がっていきます。
ステップ1:管理画面にログインする
まずは運営管理機関(証券会社や銀行など)のWebサイトにログインしましょう。IDやパスワードが分からない場合は、再発行手続きから始めてください。ここが一番のハードルですが、ここさえクリアすれば資産形成は加速します。
ステップ2:未来の掛金を変える(配分変更)
「掛金の配分変更」というメニューから、これから毎月積み立てる商品の設定を変更します。 これまでの「バランス型」や「定期預金」の割合をゼロにし、「外国株式インデックスファンド」を100%に設定しましょう。
ステップ3:過去の資産を移す(スイッチング)
「スイッチング(預け替え)」というメニューから、これまでに積み立てた元本確保型やバランス型の商品を全て売却し、「外国株式インデックスファンド」に買い替えます。
※「株価が下がってからやった方がいい?」とタイミングを計る必要はありません。20年以上の長期投資において、数日間の株価変動は誤差の範囲です。むしろ、現金のまま寝かせておく「機会損失」を防ぐため、思い立ったその日に手続きを済ませることをおすすめします。
※商品によっては、売却時に「信託財産留保額」という手数料がかかる場合があります。しかし、長期保有による信託報酬(維持コスト)の削減効果や、株式による期待リターンの向上を考えれば、微々たるコストです。過度に気にせず、早めに理想のポートフォリオへ移行することをおすすめします。
まとめ
企業型DCは、会社員に与えられた最強の「老後資金作り」ツールです。
「分散投資しなさい」という教科書の言葉に縛られて、運用効率を落とす必要はありません。 手元に生活防衛資金があるのなら、DCの中身は「低コストなインデックスファンド」一本に絞りましょう。
複雑な管理をやめてシンプルにすることで、資産運用の悩みから解放され、浮いた時間とエネルギーを本業やプライベート(人生の彩り)に使ってください。
企業型DCだけでなく、新NISAを含めた資産運用全体の最適解については、こちらの記事で詳しく解説しています。
本記事は、著者個人の経験と見解に基づく情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の制度内容、選択可能な商品ラインナップ、手数料等は、お勤め先のプランや運営管理機関によって異なります。実際の設定変更にあたっては、必ずご自身の加入者サイト等で詳細をご確認ください。
投資信託は元本保証ではありません。運用結果は市場環境等により変動します。最終的な投資判断は、必ずご自身の責任において行われますようお願いいたします。 また、本記事で紹介した税制や制度に関する情報は、執筆時点のものであり、将来的に変更される可能性があります。









